現場一期一会(寄り道する余裕もって歩き出そう)

寄り道する余裕もって歩き出そう

新年度が始まりました。新入生や新社会人が希望を胸に歩み始めます。しかし、誰もが順調というわけにはいきません。こんなはずではない、と立ち止まる人もいるでしょう。

赴任する宮城県気仙沼市で3月、「ふるさとワーキングホリデー」の報告会がありました。国が2017年から推進する事業で、地方に短期滞在しながら現地の会社などで働く制度です。地方の暮らしを体感してもらい、移住につなげようというのが狙いです。

その先進地が気仙沼だそうです。参加者は全国最多で、結果的に移住する人の割合も全国平均の3倍、と紹介されました。国の担当者も高く評価します。

なぜ、そんなに人が集まるのでしょうか。地元で運営するNPO代表の若者が推測します。

「津波で弱った地域が都会で弱った人を受け入れてくれるからかも」

学校や仕事、人間関係で悩みを抱える参加者が少なくないそうです。「都会で好調な人はわざわざ来ませんよ」。自らも大学生の時に目標を見失い、現実逃避で東日本大震災の支援に飛びこんだ一人なのです。支援する側なのに被災者に優しくされ、その後の移住につながったそうです。

報告会でも「うつだったが、自分を見つめ直す時間ができた」と、参加で元気を取り戻したとの体験談もありました。成功例ばかりではありませんが、行き詰まった時には、環境を変えたり、立ち止まったりしてみては、と聞こえます。

そうです、新人の皆さん。時には寄り道する余裕を持って歩きませんか。

朝日新聞気仙沼支局長 山浦 正敬