11年間の空白を埋める
11年を超す月日に何を考え、どんな思いで競技と向き合ってきたのか。想像するだけで、心を揺さぶられる思いがします。
2022年10月末のトーナメントで、4,207日ぶりとなるツアー2勝目をあげた、女子ゴルフの金田久美子選手のことです。
初優勝は11年春、21歳8カ月でした。3歳でクラブを握り、8歳で世界ジュニアを制覇、12歳9カ月で当時のツアー最年少予選通過記録を作った「天才少女」にとって、才能の開花を予感させるものでした。
しかし、早熟な成長は失速します。その後はいつしか優勝争いから遠く、大会に優先出場できるシード権争いが主戦場でした。
期待の重さ、166cmの長身のわりに細身で筋肉が付きにくい体質……。のしかかる難題にもがき、ドライバーは140ヤードしか飛ばず、50cmのパットが入らないことも。どん底の景色を「ゴルフをやめることも考えた」と、優勝会見で振り返ったことをスポーツ紙は伝えていました。
国内の女子ゴルフは大会数が多く、シード権を得るには大会数をこなすことが不可欠です。10代から20代前半の選手が毎週のように優勝争いを繰り広げる近年の背景には、その豊かな才能と同じくらい若さと体力が求められる、世界でも有数の過酷なツアーになった現実があります。
インスタグラムには「努力は必ず報われるとは限りません。ただ、報われるまで努力する。そんな気持ちで日々過ごしてきました。まだまだ戦い続けたい」。33歳。その折れることのない意志に圧倒されます。
朝日新聞論説委員 西山良太郎