現場一期一会(魚市場の取材で指摘を受けた必需品)

魚市場の取材で指摘を受けた必需品

その靴で大丈夫ですか。

魚市場前の岸壁で、初対面の他社の記者から声をかけられました。私の足元は合皮の革靴でした。地面にたまる水が中にしみこんできました。

5月に赴任した宮城県気仙沼市の気仙沼漁港は、生鮮カツオの水揚げ26年連続日本一を誇ります。着任4日後の夜、「明朝5時から今季初のカツオ水揚げ」と市から連絡を受けて、普段着で駆けつけました。

巻き網運搬船からカツオやビンチョウマグロが次々と水揚げされる現場で、周囲を見回すと、記者も含めて全員が防水の長靴です。

「長靴は必需品です」

アドバイスを受け、取材後にさっそく、市場前の漁業関係用品店で、滑りにくい長靴を購入しました。

さすが漁業・水産業の街です。地域紙は連日のように、魚市場の情報を紹介します。各漁船が操業中か帰航中かなどの一覧もあります。昨年はカツオを含めて不漁だったので、復調への期待は高まっています。

幸い今年の出足はまずまずのようです。それでも漁業関係者からは、心配する声が聞かれます。

「鯨とは違い、カツオなどが海でどんな状況かについては、科学的なデータがまだまだ乏しいから」

漁期が終わらないと、好不調はわからないというのです。結果が震災から復興を目指す地域経済を左右するだけに、何とか安定的に水揚げを確保したいとの思いが強くあります。

安定的な水揚げ量の確保は、全国の漁業の街に共通の課題なのでしょう。新品の長靴をすり減らす取材の機会が増えそうです。

朝日新聞気仙沼支局長 山浦 正敬