現場一期一会(2024年問題から見る被災地のバス事情)

2024年問題から見る被災地のバス事情

宮城・南三陸町の志津川湾を見渡せる岸に建つ観光ホテルは13年前の大津波の際、宿泊客ら多くがとどまって避難しました。

その玄関前を通る国道45号を走る赤色の大型バスを見かけると、一瞬、頭が混乱します。

「え、並走する専用道を走るんじゃないの」

赤色のバスはBRT(バス高速輸送システム)だからです。元はJRのローカル線でした。被災後に鉄路での復旧を諦め、BRT路線に転換。線路をとってアスファルト舗装しました。

いま一部で専用道を使わず、一般道をうかいしているのは、自動運転区間の延伸工事のためです。

BRT路線はバス専用なので、ほかの車や歩行者はいません。交差点もかつての踏切部分で、そこでの右折や左折はまずありません。自動化へのハードルが一般道よりは低いのです。

背景にバス運転手の不足があります。そこに今年4月から「2024年問題」が加わります。運転士らの残業に上限規制が設けられるのです。バス路線を維持するには、自動運転化が一助になるというのです。

全国でバス路線の廃止が相次ぎます。地方は赤字ローカル線の存廃問題も追い打ちをかけます。

ただ、運転免許を返納した高齢者にとって、バスや鉄道は買い物や通院に欠かせない移動手段です。地方では、少子化で学校統廃合が進むと遠距離通学で使う中高生も増えます。

残業規制はドライバーたちの健康を守るため必要です。同時に地方の暮らしを守るのに役立つ新技術にも期待したいものです。

朝日新聞気仙沼支局長 山浦 正敬