寝ても覚めてもすぽーっ!(上空4Mのゲームチェンジャー)

上空4Mのゲームチェンジャー

試合の流れを一気に変える選手を「ゲームチェンジャー」と呼びますが、競技そのものを変革する存在を指す場合もあります。最近では、世論や歴史を一変させる発明や出来事に例えるのも、うなずけます。

米プロバスケットのNBAでいま、ゲームチェンジャーになると評されるのがスパーズのビクター・ウェンバンヤマ選手です。

未来形なのは、19歳の昨年、ドラフト全体の1位で指名されて入ったばかりの長身ぞろいのNBAで208cmを超えれば「ビッグマン」と呼ばれますが、フランス出身の新人は身長224cm、体重95㎏。両腕を伸ばせば244cmまで広がります。まだ体ができあがっていない印象ですが、細身から繰り出すプレーは流麗そのものです。

ボードに当てて跳ね返る球を自ら空中でつかみ、そのまま決める「ひとりアリウープ」や、ゴール下へ切り込みながら球を胴回りに一周させて相手をかわして決めるダンクシュート。ゴールから離れれば3点シュートも得意です。

これまで二回り以上も小さい選手が得意としてきた動きを俊敏、かつ滑らかにこなしてしまう。通算得点で史上1位を更新し続けるレイカーズのレブロン・ジェームズ選手が「異星人に近い」と評するのも理解できます。

地上305cmのリングを争うバスケットの魅力の源泉は空中戦。選手の最高到達点は、4mに迫るほどです。大男たちが培ってきたゲームにどんな新しい地平線を描くのか。新人選手の成長が気になります。

朝日新聞論説委員 西山良太郎