寝ても覚めてもすぽーっ!(学生スポーツも「従業員」です)

学生スポーツも「従業員」です

学生スポーツをめぐる米国発の報道に驚き、考え込んでしまいました。

東部ニューハンプシャー州のダートマス大学で、バスケットボール部男子チームが3月、労働組合への加盟を決めたとの内容です。

きっかけは今年の2月。独立行政機関の全米労働関係委員会が労使関係を主張する学生選手の訴えに応じたことでした。

米公共ラジオNPRなどによると、部の活動は大学に利益をもたらし、金銭以外の報酬を通じて大学側とすでに雇用関係が存在すると認定。選手は大学の「従業員」にあたる、と従来の考え方を覆しました。

米国で学生スポーツの人気は高く、各大学は放映権や入場券・グッズの販売などで多額の収益をあげています。部での活動は「大学に雇われて働く学生と立場は変わらない」「選手の活動に賃金を支払い、ケガの医療費にも補助を」という選手側の主張は、否定し難い状況かもしれません。

大学の部活動は従来、あくまでも教育の枠内で学生の自主的な活動という位置付けでした。もはや異なる段階に入った印象です。

大学側は反論しており、他大学への広がりも含め今後の行方は不透明ですが、日本でも部活動が学生集めの方策となり、経営に影響する例が増えています。一方で薬物使用や暴力行為など不祥事は後を絶たず、学校側の管理や責任が浮き彫りになっています。

教育とスポーツの望ましい関係は何か。大学経営と部活動運営の未来にどんな仕組みを構築できるのか。改めて議論すべき分岐点に来たように感じます。

朝日新聞論説委員 西山良太郎