「消滅」に現場の地方がいらだち
新聞社の支局にも地元の自治体から広報誌が届きます。宮城県気仙沼市の5月号は、新学期の「学校統合式」が取り上げられました。少子化の影響で今春、六つの小中学校が三つに統合したためです。
少子化は全国の問題です。民間の有識者でつくる人口戦略会議が4月、地方自治体の「持続可能性」を分析した結果を公表しました。全国の自治体のうち4割がいずれ消滅する可能性があるとしました。
支局で担当する宮城県北部の3市1町はすべて「消滅可能性自治体」です。それぞれ出産や子育て環境の改善や移住の受け入れなどに力を入れます。ただ、自治体間で出産・子育て世代を奪い合っているようにも見えてしまいます。
島根県の丸山達也知事は記者会見で、この分析を「日本全体の問題を自治体の問題にすりかえている」と批判しました。「市町村単位の問題ではなく、都市部に人が集中していく構造を放置している日本社会のありようが引き起こしている現象だ」と指摘します。
新聞などの報道にも苦言を呈します。「市町村長とか市町村にマル・バツをつけて物事を見るのは正しい見方ではない」
島根は36年前、記者になって初めて赴任した地です。この間も、地方は人口が減り続け、東京の一極集中が進みました。
島根だけではありません。現場の地方は分析にいらだっているようです。
気仙沼市の市長もメッセージで市の人口減対策を示した後で訴えます。
「政府の大胆な地方創生政策の拡大に期待する」
朝日新聞気仙沼支局長 山浦 正敬