砂漠でスキーの夢
砂漠のど真ん中で雪と氷の祭典を開きたい――。季節外れですが、今回はそんな「夢」の話です。
アラビア半島の砂漠の国サウジアラビアで、2029年の冬季アジア大会が決まったのは4年前でした。
会場は建設中の未来都市ネオム。2千㍍級の山岳地帯まで広がり、冬は零下になって、一部降雪もあるそうです。
残念ながら競技ができるような積雪はなく、コースには人工雪を使います。建設するリゾート施設の電力はすべて再生可能エネルギーで賄う予定ですが、環境への負荷は心配です。
ネオムはハイテク分野などの産業を育成し、脱石油を図る政策の中核です。その一部として冬季競技の人材を育て、環境を整えながら、西アジアの拠点を目指す、という計画です。
しかし、クリアすべき課題は容易ではありません。山の断崖にせり出す湖やホテルの屋上を滑るスキーコースなど、さまざまな難工事の経費は、当初の5千億ドルから3倍に膨れあがりました。工事は思うように進まず、最終的に大会開催を断念。今年になって、カザフスタンでの代替開催が決まりました。
サウジアラビアへは、表現の自由の抑圧や、外国人労働者と女性への人権問題などに批判があります。
スポーツでも、金に糸目をつけずに著名サッカー選手を集め、自動車イベントを招致するなど人権問題を隠すために活用する「スポーツウォッシング」の批判もつきまとっています。
国家政策と財政のはざまで「砂漠でスキー」の夢に第2幕はあるでしょうか。
朝日新聞論説委員 西山良太郎
