スポーツの「成人」とは?
何歳ならスポーツの「成人」は適当でしょうか。五輪や世界選手権などスケートの国際大会で、最上位部門に参加できる年齢制限を15歳から17歳へと引き上げることになりました。
きっかけは北京五輪のドーピング問題です。フィギュアの優勝候補、カミラ・ワリエワ選手(ロシア)が五輪前の検査で陽性だったと発覚。しかし、ドーピング規定の「要保護者」となる16歳未満だったため、処分は未決定のまま出場を続けることに。五輪後、競技団体は年齢制限の改定へと踏み込みました。
近年は15、16歳で五輪に優勝、すぐに引退する例が続いています。ジャンプ重視で過度な減量から摂食障害を患い、心身の均衡を狂わせた選手もいます。
もちろん、何歳から大人扱いにすべきか、スポーツの適正な年齢に解があるわけではありません。10代の成長は身体的にも精神的にも多様です。年齢制限否定派からは「五輪金メダルの機会は極めて限られる。選手がかわいそう」「実力が上でも年齢制限で参加できない選手がいれば、世界一を争う大会とはいえない」といった声は消えません。
大事なのは多様な視点から議論を深めることに尽きる気がします。国内では、柔道が小学生の全国大会廃止を打ち出しました。指導者や保護者による過度な減量指導や言葉の暴力といった、目先の成果を求める行為への反省です。中学生の全国大会にもあり方を問い直す動きがあります。
「成人」を巡る議論は、より長く、より豊かなスポーツ人生を考える起点でもあります。
朝日新聞論説委員 西山良太郎