寝ても覚めてもすぽーっ!(下町に太鼓が響けば)

下町に太鼓が響けば

毎年、大相撲秋場所の太鼓が東京の下町・両国に響くころになると、夏が終わり、次へと向かう季節のうつろいを実感します。

初日の取組を告げる「触れ太鼓」、場所中の朝に打つ「寄せ太鼓」、取組終了後に翌日の来場を願う「跳ね太鼓」……。太鼓に加え大いちょうのまげや化粧回しといった様式美が季節に溶け込む風情は、「変えない」ことを重んじる伝統社会の魅力でしょう。

しかし、目をこらせば、変化の兆しも感じます。例えば、この春に木瀬部屋へ入門した須山は東大相撲部出身。国立大出身力士は5人目ですが、最高位は幕下で、関取はまだいません。東大からは初の挑戦です。職業として選ぶ角界や相撲部屋の印象が変化している証しでしょうか。

「無理偏にげんこつと書いて兄弟子と読ませる」といった極端な上下関係や、竹刀を振り回すような暴力的な指導も、かつては珍しくありませんでした。

ところが、モンゴルなどの海外や学生相撲の出身力士は出世が早く、そうした下積み生活の経験が少ないケースが増えました。

秋場所前で、部屋を経営する師匠のうち、元横綱白鵬の宮城野親方ら外国出身親方が6人、学生相撲経験者は14人と、43部屋の半分近く。部屋の雰囲気も変わってきました。

今年茨城に部屋を新築した元横綱稀勢の里の二所ノ関親方は力士引退後に早大の大学院で学び、修士論文のテーマは「新しい相撲部屋経営の在り方」でした。

伝統社会の足元でも、変化の音が確実に響き始めているように思います。

朝日新聞論説委員 西山良太郎