寝ても覚めてもすぽーっ!(守るべき選手の権利とは)

守るべき選手の権利とは

出場に恵まれない選手に移籍の機会を――そんな選手会の要望に、プロ野球界が「現役ドラフト」を今季のオフから実施することになりました。12球団がそれぞれ2人以上の対象選手を提示、他球団から必ず1人は獲得する仕組みです。

その評価は選手の活躍次第でしょうが、気になるのは今回の改革でも、選手の「選ぶ権利」を球団側が認めなかったことです。

国内で自由に他球団と交渉できる権利を得るには1軍で原則7年、大リーグ挑戦には9年活躍する必要があります。つまり、所属を選べる選手は正位置を長く確保したごく一部です。

その他の多くは入団時のドラフトをはじめ、自分で環境を選ぶことなく引退せざるを得ません。競争社会とはいえ、フェアな仕組みにはみえません。

こうした仕組みの根には選手を縛る「保有権」という考え方があります。選手の引き抜きを防ぎ、戦力の不均衡や年俸の高騰を抑えるのが目的でした。

しかし、サッカーでは1995年に労働者の自由な移動(移籍)を保障する欧州連合の基本法に基づく判決が出され、現在はクラブの保有権を認めないのが世界標準です。

国内でも、公正取引委員会がスポーツや芸能界を調査。「企業が選手の移動を制限すれば独占禁止法違反にあたる可能性がある」との見方を2018年に打ち出しました。このためラグビーや陸上の駅伝など、原則として移籍の自由を容認する競技が増えています。

選手の選択の自由をどう確立するのか。不断の検証と改革が欠かせません。

朝日新聞論説委員 西山良太郎